学校法人帝塚山学園

PICKUP NEWS ピックアップニュース

「田んぼプロジェクト」2022年度スタート ~田植え・除草を行いました~

6月19日、帝塚山中学校高等学校の生徒が奈良県明日香村の国営飛鳥歴史公園内のキトラ古墳周辺地区「キトラの田んぼ」で田植えを行いました。

今回の田植えは、帝塚山中学校高等学校生徒らによる「田んぼプロジェクト」の一環として行われたもので、活動は3年目を迎えています。生徒たちが、日本の原風景ともいえる飛鳥の地で、農家の方々との共同による稲作体験を通じ、「農」の観点から、伝統や文化、産業、社会を幅広く学び、理解することを目的とする取組で、今年は例年を大きく上回る32名もの生徒が参加登録しています。経験者も増え、プロジェクトは校内外に着実に根付きつつあります。

田植え当日は、悪天候との週間予報がみごとに覆り、暑いほどの陽気に。最寄りとなる飛鳥駅には、朝早くから生徒たちが集まり、プロジェクトをとりまとめる籔 稔 教諭から注意事項等の説明がありました。15分ほどで「キトラの田んぼ」に到着。指導にあたってくださるのは、これまで本プロジェクトでずっとお世話になっている樽井一樹さんと瀬川健さん。植えるのは古代米の「神丹穂(かんにほ)」という品種で、秋になると田んぼは一面、みごとな赤色の稲穂でいっぱいになるとのことです。

まずは、豊作を願い、代表生徒により、花が手向けられました。そのあと、生徒たちは素足になり、おそるおそる田んぼに・・・。独特の泥の感触になんともいえない表情を見せていましたが、すぐに慣れたようでした。最初の作業は、苗を一列にまっすぐに植えるためのガイドのロープ張り。ここでミスを犯すと後の作業に支障をきたすので、慎重に進める必要があります。これが終わると、苗が一人ひとりに手渡され、いよいよ田植えです。丁寧に丁寧にガイドに沿って植え付けたつもりがなかなか一直線にならなかったり、田んぼの端のほうの対応が難しかったりと、生徒たちは泥汚れは後回しで植え付けに夢中になっていました。アマガエルやカブトエビなどの水生生物も顔を出し、生物に詳しい男子中学生による解説もありました。田んぼには帝塚山中学校高等学校の先生方も姿を見せ、激励を送っていました。



作業は順調に進み、昼食の時間に。昼食後は小学生以来となるドッジボールを楽しんだり、田んぼに生息する生物を観察したりして、思い思いに過ごしました。

午後からは座学として、樽井さんと瀬川さんから、無農薬・無肥料での稲作についてお話がありました。害虫との戦いは必至ですが、虫の中には雑草を食べてくれる益虫もいます。無農薬の稲作では益虫の働きがとてもありがたいのですが、今年は雑草を食べてくれるジャンボタニシが少ないそうで、7月の除草作業はひときわ手がかかるのではないかとのこと。また、農業には、販売、環境、就労などさまざまな課題が複合的にからんでおり、それらをどのように解決していくかが重要との説明もなされました。話に興味関心を抱いた生徒たちからは、一般的な農業の損益ラインや都会と地方の暮らしの違いなど質問がなされました。籔教諭は、今日植えた苗の姿・形をよく覚えておいてほしい。これが数週間、数か月たつと、きれいで立派な稲穂になるから、と生徒たちに熱のこもったメッセージを寄せました。

 
生徒たちは、7月10日にもキトラの田んぼに集まりました。先日、ひと苗ずつ丁寧に植えた稲は3週間の間に大きく生長していましたが、雑草もかなり生い茂っていました。稲は無農薬で育てているため、一層の手入れが必要で、今日、生徒たちが集まったのもこの雑草を取り除く作業を行うためでした。生徒たちは、自分たちが植えたところだけでなく、周囲の田んぼにも目を凝らし、専用の器具や鎌を使いながら、さらには手作業で、時間をかけて丁寧に除草していました。草の中には見た目が稲にそっくりなものがあり、樽井さんと瀬川さんから見分ける方法について説明を受けていました。秋に良質の米を収穫するには、この地道な作業を丁寧に行う必要があるとのことで、生徒たちは泥だらけになりながら、しぶとい雑草と格闘していました。

午後からは班ごとに分かれ、9月に同地で催される「古代稲を愛でる会」でのポスター展示・発表に向け、研究テーマの選定を行いました。今年のプロジェクトはグループ単位で取り組む場面も多く、ミーティングでもリーダー役を務める上級生が議論を進行し、班をとりまとめている様子がみられました。終盤には、各班から、害虫や益虫、稲作の歴史、食文化、米の生産事情など米から連想される幅広い研究テーマが披露され、この夏、課題に取り組む意気込みもみられました。

今回のプロジェクトは、中学1年から高校2年まで幅広い年齢の男女が参加。学年・性別を越えた取組は生徒たちに大きな刺激・成長をもたらすでしょう。本プロジェクトの実施にあたり、樽井さん、瀬川さん、国営飛鳥歴史公園のみなさま、そして明日香村のみなさまに多大なご支援をいただいておりますことを深く感謝申し上げます。